大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和33(オ)539 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人森吉義旭の上告理由第一点について。

原判決は「昭和二八年一二月はじめころ被控訴人はD製紙株式会社にパルプ材原

木売却の交渉をし」と判示しており、同判決の引用する第一審判決は「昭和二九年

一月初旬訴外D製紙株式会社からパルプ資材の注文があつた」と判示しているもの

であつて、右両判示は必ずしも相容れないものではない。されば、この点につき理

由のそごがあるとする論旨は理由がない。

その他の論旨は、経験則違反を主張するけれどもその実質はすべて、原審が適法

にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採用し難い。

同第二点について。

原判決は、上告人の「訴外E木材株式会社は昭和二八年六月から休業し、その状

態はF林業株式会社と変更してからも継続し、実質的には清算中であつた」旨の主

張に対し、同訴外会社は依然「持山の整理とか原木売買の仲介等の事業を営み」、

実質的に清算中というのは当らない状況にあつたと判断している趣旨と解すべきで

あつて、この判断には何ら違法の点はない。所論は、原判決の趣旨を正解せず、し

かも独自の見解に立脚してこれを攻撃するものであるから、採用し難い。

同第三点及び第四点について。

所論は、経験則違反等を主張するけれどもその実質はいずれも、原審の適法にし

た証拠の取捨判断及び事実の認定を非難するに帰着し、とり得ない。

同第五点について。

上告人の本訴請求を理由あらしめるためには、上告人は、上告人が本件手形を割

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引いたのは振出人がE木材株式会社と記載されていたからであるという事実を立証

する責任があるところ、原判決はその専権の範囲内において右事実を確認するに足

る証拠がないと判示しているのである。されば、原審が、たとえ振出人をE木材株

式会社と記載したことについて被上告人に過失があつても右過失により本件損害を

生じたものと認めることはできないと判断したのは相当であり、原判決には所論の

ような違法はない。

同第六点について。

所論のような注意義務はこれを認めることができないから、原判決がその旨判示

したのは正当であつて、認め得ない理由の判示は必ずしもこれを要するものではな

い。

次に、商法二六六条の三は取締役が其の職務を行うにつき悪意又は重大なる過失

あるときは、右職務執行に因つて損害を蒙つた第三者に対し連帯責任を負うべきこ

とを定めた規定であるところ、原審は、本件手形振出人が「E木材株式会社」と記

載されていたことと原判示割引との間には因果関係を認めさせるに足る証拠がない

としたものであるから、原審が本件に同法条を適用しなかつたのは当然であつて、

原判決には所論の違法はなく、論旨引用の判例に牴触するものでもない。

同第七点について。

第一、二審判決は、いずれも、被上告人が原判示商号変更を二週間内に登記しな

かつたため本件手形振出人名義にも旧商号たる「E木材株式会社」と表示せざるを

得なかつたのは被上告人の過失であると認めた趣旨において異るところはないから、

所論のようなくいちがいはない。論旨は理由がない。

同第八点について。

原判決理由を精読すれば、第一審判決中所論の部分は引用しない趣旨であること

が了解できないわけではない。されば論旨は理由がない。

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同第九点について。

所論は、単なる事実認定の非難にすぎないので理由がない。

同第一〇点について。

判決の事実摘示は、必ずしも当事者の主張をそのまま掲記しなければならないも

のではなく、これを十分整理統合して記載すべきものである。そして、記録に徴し

ても、原判決事実摘示及びその引用する第一審判決事実摘示が上告人の主張及び抗

弁の摘記を遺脱したとは認め難く、また、原判決理由は右摘記された主張及び抗弁

に逐一判断を与えている。されば、本論旨もまた理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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